法律上99万円以下の現金は自由財産となりますが、実際には33万円以上の現金があれば同時廃止ではなく、少額管財事件となります。
こちらでは、33万円以上の現金がある場合は同時廃止とならない事について解説いたします。
33万円以上の現金がある場合
破産手続きでは、原則管財手続を行う事になっており、同時廃止手続きはあくまで例外的な扱いとなります。
例外的に同時廃止となるのは、破産手続き費用が支払えるほどの財産がない事が明らかな場合のみです。
東京地裁では、少額管財の際に支払う予納金は原則20万円ですので、20万円の現金があれば破産手続き費用を支払えると考えられます。
しかし、民事執行法により標準的な世帯の2か月分の生活費に当たる金額を差し押さえ禁止としており、その額は66万円であるとしています。
つまり1ヶ月に必要な生計費は33万円としているという事になります。
そのため、東京地裁では破産者が手続き開始時に持っている33万円以下の現金は、最低限生活に必要な費用であるとして扱い、33万円を超える現金を持っている場合のみ、同時廃止ではなく少額管財手続にする運用を行っています。
法律上99万円以下の現金は自由財産である
では、破産法によって99万円以下の現金は自由財産であるとされている事との関係はどうなるのでしょうか。
99万円以下の現金を自由財産とするという趣旨
破産法では99万円以下の財産は自由財産となり、換価処分の対象とはならないとしています。
先述の通り法律上一般的な家庭で最低限必要な生計費は、1ヶ月33万円とされており99万円は3ヶ月分の生活費という事になります。
破産したら破産者は財産の多くを失う事になりますが、いくら借金の返済を免れても全財産がなくなってしまったら、その後生活して行く事が出来なくなってしまいます。
そこで法律によって99万円以下の現金を自由財産とし、少なくても3か月分の生活費となる現金は持っていてもよいという事にしています。
20万円の引継予納金の疑問
法律の趣旨からいうと、同時廃止でも管財手続きでも、99万円以下の現金は破産者が有している事が認められていて、債権者に配当される事はありません。
しかし東京地裁の運用では、33万円以上の現金を有していれば少額管財手続きとなり、持っている現金の中から20万円を引継予納金として支払わなくていけなくなってしまいます。
もし破産時に33万円の現金を持っていたとしたら、法律上は自由財産のはずですが手続きは少額管財となって、引継予納金20万円を支払わざるを得ないという事です。
少額管財とされる理由と疑問
このように33万円以上の現金を持っている場合には、東京地裁では少額管財事件として扱われる事になりますが、この運用には疑問もあります。
もし33万円以上の現金があって少額管財事件になっても、現金は自由財産なので債権者に配当される事はなく、支払った引継予納金は破産管財人へ支払う報酬になります。
要するに破産者の財産が99万円以下の現金のみの場合には、債権者への配当はありません。
にもかかわらず、最低限の生活費として認められているはずの自由財産を減らしてまで、管財手続きをする必要があるのかという疑問が生じるのです。
もちろん原則として破産手続は管財手続であり、同時廃止にした場合には財産などの調査が行われないため、不正が生じる恐れがあるのも事実です。
しかし法律の趣旨からいえば、破産者が99万円以上の現金を有する場合に少額管財とするという方が、納得出来るように感じます。

