破産申立者が不動産を所有していれば、手続きは管財事件となるのが一般的ですが、その不動産がオーバーローンとなっているケースでは、同時廃止手続として扱われる事があります。
こちらでは、同時廃止とオーバーローンの関係について解説いたします。
※管財事件と同時廃止事件
不動産を所有している場合
不動産というのは土地や建物等の事で、これらを売却すればそれなりの金銭を得る事が予想されます。
ですから基本的に、破産申立て者が不動産を有している場合には、管財事件として破産管財人がその不動産を換価処分する事になります。
不動産を持っていいても同時廃止となるケース
このように不動産を持っている場合は管財事件となるのが基本ですが、中には不動産を持っていても同時廃止になるケースがあります。
それはオーバーローンのケースです。
住宅ローンを組んで不動産を買った場合には、その不動産には抵当権が付けられているのが一般的です。
その不動産が住宅ローンの担保になっているという事ですので、住宅ローンの返済が出来なくなった時、抵当権が付けられた不動産を債権者は競売に掛けて売り出す事が可能であり、その売却金も優先的にもらう事が出来ます。
抵当権のついている不動産の価値よりも、残っている住宅ローンの残債が大きい場合の事を「オーバーローン」といいます。
東京地裁では、不動産を持っていても1.5倍以上のオーバーローンである場合には、同時廃止の手続きが取られます。
オーバーローンで同時廃止になる理由
例えば住宅ローンを利用して購入し抵当権を設定した住宅があるとします。
現在住宅ローンの残高は2,000万円ですが、売りに出したとしてもその不動産は1,000万円程度の価値しかありません。
この場合、住宅ローンの残高2,000万円に対して実際の不動産の価値は1,000万円なので、2倍のオーバーローンという事になります。
抵当権を持つ債権者(抵当権者)は、破産手続きが開始しているかどうかにかかわらず、抵当のついている不動産を売りに出し、優先的に返済を受けられます。
破産法上では、抵当権などの担保権は別除権として扱われる事になっていて、破産手続き関係なく担保権を実行し、優先的に債権回収する事が出来るとされているのです。
そうなると破産手続としてオーバーローンの不動産を換価処分したとしても、そのお金は全て抵当権者に支払われる事になり、他の債権者に配当される事はありません。
先程の例で言えば、不動産が1,000万円で仮に売れたとしても、住宅ローンが2,000万円残っているため、その売却金は全て住宅ローン会社のものとなり、抵当権を持たない他の債権者への配当はないのです。
つまりオーバーローンの不動産は、抵当権者以外には何の価値もないのと同様です。
さらに抵当権者は破産手続きで換価処分しなくても、競売などで抵当権を実行出来ますので、破産管財人が破産手続きで換価処分する必要はありません。
そのため東京地裁では1.5倍以上のオーバーローンの不動産を所有しているような場合に、同時廃止として取り扱います。
これは住宅ローンに限らず、抵当権で担保されている借金も同様です。
債務が不動産の価値の1.5倍以上あれば、やはりオーバーローンという事になり同時廃止が選択されます。
同時廃止となった時の不動産の処分
オーバーローンの不動産であるため同時廃止になったとしても、当然自己破産したら不動産を所有し続けられる事はありません。
同時廃止となる事で、あくまでも破産手続きで処分されないというだけであり、抵当権者は抵当権を実行し、競売などでその不動産を処分する事になるでしょう。

